中古マンションを現金で一括購入しようと考えている皆さん、こんにちは。
ハウスメーカーで10年営業をしている大林です。
中古マンションを購入できるだけの現金が用意できた場合、現金一括で払ってしまった方が得なのか?
それとも住宅ローンを組んだほうがいいのか?
そこで今回は「中古マンションを現金一括で購入するメリットとデメリット」について書いてみました。
是非、参考にしてください!
メリット
生活がラクになる
毎月の利息なし
まず現金で一括購入できるとなると、住宅ローンでお金を借りる必要がなくなるため、毎月の利息が0円になりムダな出費をせずに済みます。
毎月の出費が抑えられるのは大きいですね。お金も貯まります。
もしもの時にもお金に余裕があると安心です。
住宅ローンを借りた場合の返済額は以下の通りです。
毎月の返済額:84,685円
総返済額:約3,557万円+手数料50万円前後
つまり、住宅ローンを借りると、利息+手数料で600万円程多く支払うことになります。
ローンの諸費用なし
また、ローンの諸費用もかかりません。
住宅ローンの主な諸費用は以下の通りです。
・ローン保証料:0~数十万円(金利に上乗せされて0円の場合も)
・印紙代:2万円(借入額1,000万円以上5,000万円未満の場合)
これらは現金購入した際には必要のないものです。(他に火災保険料もありますが、現金購入した場合も別途加入するとして省略します)
融資手数料と保証料は借入先や借入額、借入期間によって大きく異なりますが、いずれも合計すれば数十万円程かかることが多いです。
その分、引越し費用等に充てることができますね。
時間を節約できる
ローンを組まなければ審査も必要ありません。
何度も金融機関に来店しなくて済みますし、多くの書類を記入したり、必要な書類を集めたりしなくてもよいのです。
ローンの審査にかかる時間と労力を節約することができるということです。
金融機関に来店するにも平日の昼間でなければいけませんので、そのために仕事を休む必要もありません。
安く買える可能性がある
売主が早く売却したいと考えている場合、現金購入は上記の通り時間がかからないので喜ばれることもあります。
つまり、値引き交渉もしやすくなるのです。
売りに出て時間が経っている場合は特に、強気で値引き交渉しても良いでしょう。
逆に売りに出て時間が経っていない物件や待っていても買い手がつくような物件、売却を急ぐ理由がない場合であれば、現金購入でも値引きできる金額は変わらないと言えます。
デメリット
手元に残る現金が少なくなる
一番のデメリットは「現金がなくなってしまう」ということです。
住宅は購入した後にも多くのお金がかかります。
固定資産税や火災保険料、マンションの維持費(管理費・修繕積立金・駐車場代)などなど。
そちらの支払いが苦しくなっては本末転倒です。せっかく新しい生活を初めても生活が貧しくては意味がないのです。
「手元に現金を残して余裕のある生活をする」というだけでも、住宅ローンに高い利息を払う意味はあります。
また、将来大きな出費があれば、住宅ローンより他のローンの方が金利は高くなります。
将来教育ローンや自動車ローンを借りるよりは、住宅ローンを借りながら大きな出費に備えて現金を少しでもとっておいた方が得です。
更に、住宅ローンを借りて手元の現金を資産運用した方が、プラスになる可能性もあります。
⇒「頭金なしで住宅ローンを組むメリット・デメリットまとめ」
住宅ローン減税制度を活用できない
住宅ローン減税はその名の通り、住宅ローンを借りた人に適用される減税制度です。現金購入をしてしまうと適用できません。
住宅ローン減税とは
住宅ローンを使って住宅を購入した場合、毎年の住宅ローンの残高に応じて所得税や住民税から控除され、確定申告で戻ってきます。
平成33年12月31日までは、毎年最大40万円(合計400万円)の控除を受けることができます。(長期優良住宅、低炭素住宅の場合は毎年最大50万円)
毎年の控除額は「ローン残高の1%」、「1年間の最大控除額40万円(50万円)」、「所得税+住民税額(住民税は上限13.65万円)」のうち、一番小さい額になります。
つまり、住宅ローンの借入額が多く、収入が多い(支払う所得税が多い)ほど得をする制度です。
住宅ローン減税を使った方が得?
現金購入はローンの利息を払わなくて良い分、住宅ローン減税を利用できません。
では、実際はどちらが得なのでしょうか。
まずは住宅ローンを借りた場合の10年間の控除額です。年収500万円(ボーナス払いなし)の場合で計算してみました。
借入額3,000万円 借入期間35年 金利1%(固定金利)元利均等返済の場合
1年目 | 2年目 | 3年目 | 4年目 | 5年目 | 6年目 | 7年目 | 8年目 | 9年目 | 10年目 | 10年間合計 |
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24.1万 | 24.1万 | 24.1万 | 24.1万 | 24.1万 | 24.1万 | 24.1万 | 24万 | 23.2万円 | 22.4万円 | 238.3万円 |
では、住宅ローンを借りた時にかかる費用と返ってくるお金を見てみましょう。
ローンを借りた時にかかる費用 | 利息556.7万円+手数料50万円前後 | 合計 600万円 |
---|---|---|
ローンを借りた時に受けられる控除額 | 238.3万円+すまい給付金10万円 | 合計 250万円 |
かかる費用の方が控除額よりも350万円ほどはるかに上回ることがわかります。つまり、圧倒的に現金購入した方が得です。
これより年収が高い場合でも、借入額3,000万円なら最大でも控除額は258.7万円にしかなりません。(すまい給付金は年収が高いともらえなくなります。)
⇒「初めて新築を建てるときの補助金まとめ」
借入額が高くても低くても、現金購入した方がやはり得なのです。
団体信用生命保険に加入できない
住宅ローンを借りる際には、ほとんどの金融機関(一部の金融機関やフラット35を除く)で団体信用生命保険の加入が条件となって付いてきます。
保険料は利息の中に組み込まれていますので、別途支払う必要はありません。
契約者が死亡したり高度障害になった場合、団信に加入していればローンの残債は保険金から支払われます。つまりチャラになるということですね。
現金で一括で購入しても、契約者にその後もしものことがあって生活に困ってしまっては意味がありません。
現金を手元に残し、住宅ローンを少しずつ払いながらもしもの時のリスクに備えるというのも一つの手です。
しかしこれはもしもの時だけの話ですので、「それよりも利息を余分に支払いたくない!」という人には現金購入が良いでしょう。
その際には住宅資金の保障も含まれる生命保険に加入した方が良いです。ただ、団信よりは割高になります。
どちらにせよ、団信に加入した場合・しなかった場合どちらも、住宅を購入した時には生命保険の見直しが必要です。
よくある質問
税務署からお尋ねくるの?
「お尋ね」とは?
住宅を現金一括購入すると、数か月後に税務署から「お買いになった資産の買い入れ価格などについてのお尋ね」や「新築、買入れまたは賃借された家屋等についてのお尋ね」という名前の
文書が送られてくることがあります。
この文書は不動産を購入した人全員に送られてくるわけではなく、現金で住宅を購入した人や所得に見合わない住宅ローンを組んでいる人など、お金の出所を調査する必要があると税務署が判断した人のもとに届きます。
そして、「どのように現金を調達したのか」、「申告されていない贈与があったのではないか」ということを調べます。贈与があったのなら、金額によっては贈与税を納めなければいけませんからね。(後ほど詳しく記述します)
なぜ税務署が住宅を購入したことまで知っているの?
不動産登記をすると税務署にもその情報が入ります。
住宅ローンを組んでいる場合、抵当権設定登記というものが記載されます。
つまり登記簿を見れば、現金で購入したかどうかまで税務署にはわかるのです。
毎年の所得も当然税務署は把握していますから、誰かの援助がなければ買えないのではないかと判断されてしまうと「お尋ね」を送付することになるわけです。
「お尋ね」の内容は?
主に、購入時期や価格、職業や年収、資金の調達方法を聞かれます。
回答は強制ではありませんが、お尋ねを無視し続けたり虚偽の回答をすると余計に税務署から怪しまれ、場合によっては大々的な「税務調査」になってしまうこともあります。
速やかかつ正確に回答しましょう。
証拠を残しておこう
いざという時のために証拠となる重要書類はきちんと残しておきましょう。
売買契約書をはじめ、自己資金なら預金通帳、親からお金を借りた場合には金銭消費貸借契約書(借用書)と返済していることがわかる通帳、贈与を受けたときには贈与契約書などが証拠になります。
また、夫婦で共有名義になっている(夫の持ち分が100%でない)場合も、登記した持ち分がそれぞれの収入に見合っていないと、夫婦間での贈与がなかったか疑われます。
例えば、3,000万円の住宅の持ち分を夫婦50%ずつ(1,500万円ずつ)にしたとします。しかし、夫の年収が500万円、妻の年収が100万円だと、夫から妻に贈与があったのではないかと税務署は疑うわけです。
夫から妻へ借金をした場合も、金銭消費貸借契約書を作成し、実際返済している証拠を残しておきましょう。
親から援助して貰ったけど、確定申告は必要なの?
贈与税とは?
住宅購入目的で無条件にお金を援助してもらうことは「贈与」にあたります。
通常、1年の間(1月1日~12月31日)で基礎控除の110万円を超える贈与には贈与税がかかります。
しかし、住宅購入目的の贈与の場合、「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」を適用すれば、基礎控除110万円にプラスして700万円(長期優良住宅は1200万円)、つまり合計810万円までは非課税になります。※消費税8%で契約、平成32年3月31日までに住宅取得した場合
非課税なら申告は不要?
では非課税の範囲内であれば申告は必要ないのでしょうか。
答えはNOです!「住宅取得等資金の贈与税の非課税制度」を適用するには申告が必要です。
申告しなかった場合、この制度は適用されません。申告期限(住宅取得した翌年3月15日)を1日でも過ぎたらダメです。
基礎控除110万円を超えた分には課税されてしまいます。
非課税制度の適用条件
他にも、贈与を受ける相手や住宅取得のタイミングにも規定があります。
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、贈与資金の全額を住宅取得に充てること
・贈与を受けた年の翌年3月15日までに、その住宅を購入・入居すること
・マンションなど耐火建築物は築25年以内であること
など
つまり、贈与を受けた財産を後々の生活に充てることはできないのです。引越し費用や家具家電に充てるのもNGです。
そして必ず「①贈与を受ける」→「②その資金で住宅を購入する」の順番でなくてはいけません。
まとめ
いかがでしたか?
中古マンションを現金一括で購入するメリットとデメリットとに加え、贈与税について紹介しました。
現金一括で購入した方が利息が不要な分やはりオトクです。
ただし、住宅ローンに入ることで回避できるリスクもあります。
また、現金購入で合計金額が安く済んでも、生活が苦しくては意味がありません。
自分の収入や将来の収支プランによってどちらの選択が自分に合っているか見極めてくださいね。
無理のない資金計画での購入を!